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修復治療の質を左右する光照射-後編-

作成者: Ultradent Japan|2025/10/27 3:59:09

前編では、照射器を選ぶ際に注意すべきポイントと、その背景について紹介した。
後編では、照射器に求められる資質について、症例写真とともにさらに深掘りしていく

 

ここで見落とされがちなのが価格に関する考え方である。現在市販されている光照射器の価格は数千円から数十万円までと幅広い。低価格帯でも一見すると放射照度の数値は同等に見えるが、その差は光ビームの均一性、先端チップの設計、コリメーション、そしてバッテリー管理性能に反映されている。

報告によれば、高価な照射器が問題なく使用できる間に必要なレジン修復の総コストの1%にも満たない2)とされており、照射器を“節約の対象”とするのは誤った判断だといえる。むしろ信頼性の高い照射器を選ぶことは、修復治療の質と長期予後を担保する投資と考えるべきである。

 

さらに最近では、硬化だけでなく診断補助ツールとしての活用も進んでいる。う蝕や亀裂の検出、そして充填範囲の確認といった応用により、照射器は「硬化のための道具」から「診療を支える多機能な光学デバイス」へと進化しつつある。

Fig2. 術前

Fig3, 4. VALO Xに透照診用のチップ(トランスルームレンズ)を装着して照射することでう蝕と亀裂の存在を確認

VALO Xで上記照射を行う際は、付属のトランスルームレンズをご利用ください。VALO GRANDをご使用の場合は、別途VALO GRAND用トランスルームレンズをご購入のうえ、ご利用ください。

Fig5. う窩の開拡

Fig6. う蝕除去後、窩洞形成後

Fig7. 充填後

Fig7. 術後

 

修復治療の成功は、多くのステップが正確に積み重なって初めて得られる。その一手を担う光照射は、決して軽視できないプロセスである。放射照度の均一性に加え、常に安定した電源供給が欠かせない。これらが担保された照射器は必然的に高価格となり、この価格はむしろ長期的な予後を支えるための合理的な投資といえる。こうした特性を備えた照射器こそ、これからの修復治療における新しいスタンダードとなるだろう。

 

 

1)Dayane, et al. Light curing matters: Facts often overseen by dentists. Restorative Dentistry. 2018.5(4).art.4
2)MG Rocha, et al. Light-emitting Diode Beam Profile and Spectral Output Influence on the Degree of Conversion of Bulk Fill Composites. Operative Dentistry. 2017, 42-4, 418-427
3)IO Cardoso et al. Influence of Different Cordless Light-emitting-diode Units and Battery Levels on Chemical, Mechanical, and Physical Properties of Composite Resin. Operative Dentistry. 2020, 45-4, 377-386

 

【著者】

北久里浜矯正歯科 歯科医師
歯学博士

林 明賢 先生

 

【略歴】
2015年 鶴見大学歯学部卒業
2015年 長崎大学病院総合歯科診療部
2016年 東京医科歯科大学 う蝕制御学分野
2019年 フロリダ大学 保存修復学講座
2022年 東京医科歯科大学大学院修了 歯学博士
【資格・所属学会】
日本歯科保存学会 認定医
日本接着歯科学会 会員
International Association for Dental Research member

 

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